第465章 彼女の周りの男狐たち

鈴木之恵は一番下のチケットを取り出すと、田中晃の達筆なサインの他に、小さなクマの顔が描かれているのを見つけた。

「ありがとう」

鈴木之恵はもう一度言って、チケットを引き出しにしまった。

「コーヒーはいかがですか?」

田中晃は急いで答えた。

「はい、お願いします」

鈴木之恵はドア越しに木村悦子に声をかけた。

「コーヒーを二杯持ってきて」

木村悦子はすぐにコーヒーを二杯持ってきて、何度も振り返りながら名残惜しそうに部屋を出て行った。

田中晃は携帯を取り出してコーヒーの写真を撮り、微博に投稿した。

【こんなに美味しいコーヒーは初めてだ】

この投稿を藤田深志が見たのは一時間後で、柏木正が先に気づいて携帯を渡しながら言った。

「社長、このデスク、奥様のものに似ていませんか?」