第464章 姉さん、チケットを届けに来ました

藤田深志は本を閉じて脇に置き、彼女を呼んだ。

「こっちにおいで!」

鈴木之恵は、二人のこのような関係が何となく老夫婦のようだと感じた。習慣とは恐ろしいものだ。

この数日間、彼女は彼に抱かれて眠ることに慣れていた。一人で寝るのは確かに寂しいときもあり、彼の腕の中で眠る方が安心できることを認めていた。

鈴木之恵はベッドに上がり、そっと横になった。

「藤田深志、今日は疲れているの。」

彼女の暗示は明らかだった。

藤田深志は低く笑って、

「おいで、何もしないから。」

鈴木之恵は疑わしげに彼を見つめた。藤田深志は約束した。

「本当に何もしないよ。おいで、抱きしめて寝よう。」

藤田深志のベッドでの言葉が、ついに一度だけ信用できるものとなった。本当に何もせず、ただ抱きしめて眠った。これは鈴木之恵が最近で一番心地よく眠れた夜だった。

誰も彼女を困らせることなく、彼に抱かれて、温かく、安心できた。

この夜、二人とも良く眠れた。藤田深志もしばらく不眠に悩まされていなかった。彼女は、どんな薬よりも効果があった。

藤田深志は階下の祖父の所で朝食を作り、三人で食べ終わると、鈴木之恵は自ら台所の片付けに向かったが、お爺さんに台所から追い出された。

「若い娘さんはこんなところに来ちゃダメだよ。台所は油煙が多くて肌によくない。二人とも支度して出勤しなさい。この程度の食器なら、暇な私が洗っておくから。」

藤田深志は鈴木之恵の小指を軽く引っ掛けて、

「行こう、仕事だ。」

ここから会社は近く、二人で歩いて行くと、たった十数分の道のりだった。これは藤田深志が鈴木之恵のペースに合わせた速さだった。

彼一人なら、十分もかからずに着いただろう。

「之恵、今晩仕事が終わったら渡辺文恵に会いに行こう。」

「じゃあ、できるだけ仕事を午前中に済ませて、夕方早めに終わらせるわ。遅くなると渋滞するから。」

「いいよ。」

二人の会社は道路を挟んで向かい合っており、ビルの下で別れて、それぞれ上階へ向かった。

鈴木之恵がエレベーターを出て会社に着くと、社内が賑やかだった。社員たちが集まってガヤガヤと何かを話しており、普段ならこの時間は自分の席で朝食を食べながらおしゃべりしているはずだった。

彼女が近づいて尋ねた。

「何かあったの?こんなに賑やかだけど。」