第489章 1分も足りなくてはいけない

鈴木之恵は目尻が赤くなり、

「渡辺医師、お願いします。母に謝罪してください!」

渡辺文恵は今日はもう逃げられないと悟り、恐る恐る尋ねた。

「お墓参りが終わったら、私を送り返してくれますか?ご覧の通り、孫が今ちょうど眠くなってきて、外には長く居られないんです。帰ったら嫁に叱られてしまいます」

藤田深志は冷笑して、

「あなたにも恐れる人がいるんですね?まさに因果応報ですね」

「行きましょう。今はあなたが条件を出せる立場ではありません」

渡辺文恵は家に戻って小さな毛布を取り、抱いている子供を包み、大人しく藤田深志の車に乗り込んだ。

子供は本当に眠くなっていて、抱かれたまま眠りについていた。

渡辺文恵は不安そうにまた尋ねた。

「私たちに何もしないでくれますよね?私たち老人と幼児を送り返してくれますよね?」