蛇口を開くと、頭上からお湯が降り注ぎ、浴室に立ち込める湯気で鈴木之恵の顔が自然と熱くなり、赤くなった。
鈴木之恵は彼に背を向けた。この状況では余計な想像をせずにはいられない。大人の男女の自制心は、一言、一つの声で崩れ去ってしまう。
藤田深志は大きな手で優しく彼女の背中を撫で、ボディソープで泡立てた。
彼は手を伸ばして水を止め、
「之恵、こっちを向いて、前がまだだよ」
鈴木之恵は頭皮がピリピリして、息を呑みながら答えた。
「私、私自身でやります」
ボディソープのボトルは藤田深志の手の中にあり、彼は低く笑って、
「無料の労力だよ、本当に使わないの?」
鈴木之恵は振り返る勇気もなく、見てはいけないものを見るのを恐れ、また不適切な思いを抱くのも怖かった。
「いりません、ボディソープを渡してください」