第509章 拒否

田中清彦は我に返り、魂が抜けたような表情を浮かべた。

「今、何て聞いたんだ？」

田中晃は眉間にしわを寄せ、無礼な口調で言った。

「お父さん、その様子じゃまるで妖怪に魂を抜かれたみたいだけど、新しいお母さんでも見つけたの？」

田中清彦は息子の頭を軽く叩いた。

「何を言っているんだ？しっかりしろ」

少し間を置いて、また尋ねた。

「さっき病室で、藤田深志があの娘がもうすぐ誕生日だと言っていたが、聞き間違いじゃないよな？」

田中晃は今日買ったばかりのフィギュアをいじりながら、だらけた声で答えた。

「鈴木之恵の誕生日は1996年10月21日だよ」

田中清彦は息を呑んだ。1996年……

「どうして彼女の誕生日を知っているんだ？よく覚えているな」

田中晃は珍しく顔を赤らめた。

「お父さん、なんでそんなに聞くの？」

田中晃は一瞬止まり、驚いた表情を浮かべた。

「お父さん、変なことしないでよ。彼女とは一世代違うんだから。新しいお母さんを探すのは反対しないけど、僕の同意が必要だよ。僕と同じくらいの年齢の人はダメだからね」

田中清彦は再び息子の頭を叩いた。

「このバカ息子、何を考えているんだ。まともなことを考えろ。言っておくが、あの娘に手を出すな。大人しく見合いに行け」

田中晃は父親の言葉に激怒した。

「お父さん、余計なことしないで。この時代に何の見合いだよ？僕はやらない。やりたければお父さんがやれば。僕のこの顔なら、もう有名人だし、見合いなんて必要ないよ」

「見合いしないなら、嫁さんを連れてこいよ。大口叩いてるだけで、まともなことは何一つできない。あの娘には手を出すなと言っただろう？」

田中晃は黙り込んだ。自分の気持ちは父親に見透かされていたので、もう隠す必要もないと思った。

「お父さん、やっと好きな人ができたのに、応援するどころか反対するの？他の人はお父さんの年でもう孫を抱いてるのに、焦らないの？」

田中清彦は大きく反応した。

「ふざけるな。今日はっきり言っておく。他の誰でもいいが、あの娘だけはダメだ。言うことを聞かないなら、明日にでもカードを止めるぞ」

田中晃は再び驚いた。自分は何もしていないのに、なぜカードを止めるほど深刻な事態になるのか？考えた末、父親が何か隠していると感じた。

「お父さん、どうして？」