夜は更けていた。
鈴木之恵と藤田深志はベッドの上で寄り添っていた。二人が出会ってから今まで、こんなに激しく愛し合ったことはなかった。
鈴木之恵はバカではない。彼女は彼のフランス行きが危険に満ちていることを理解していた。それは彼女の想像以上に危険なものだった。
彼女は心配していたが、彼は何も言わなかった。
鈴木之恵は腕で彼をきつく抱きしめ、
「行かないでくれない?」
藤田深志は片手で彼女の髪を指の間で弄びながら、
「僕が行かなければ誰が行くんだい?君は家で待っていてくれ。バリーを連れて帰るから。それに君の兄も数日後に飛んでくると言っている。何も起こらないよ、安心して。」
鈴木之恵が安心できるはずがなかったが、彼女には止める術がなかった。
翌日、藤田深志は手元の仕事をすべて段取りし、すべてを柏木正に任せ、必要なら藤田晋司に署名をもらうよう指示した。