鈴木之恵はドアを押し開けて入ってきた。
「姉さん、少し休んだ方がいいんじゃない?」
バリーは顔を上げて鈴木之恵を見た。両目は真っ赤に腫れていた。
「之恵、少し冷静になりたいの。彼はまだ外にいるの?」
鈴木之恵はうなずいた。
「彼はあなたを見守りたいんだよ。入れてもらえなくても、外で待っていれば少しは安心できるんだ。離れるよりはいいと思って」
バリーは黙り込んだ。
「之恵、時間があったらウィッグを買ってきてくれない?」
バリーは自分の髪をとても大切にしていたが、抜け毛は仕方のないことで、時間が経つにつれてその現実を受け入れるようになっていた。
今、藤田晋司を見て、彼女の容姿に対する不安は頂点に達していた。自分のこんなみすぼらしい姿を彼に見せたくなかった。たとえ心の中では彼との関係を続けたくないと思っていても。