第526章 私たちは悪者ではない

鈴木之恵が車から降りると、藤田深志はほっと息をついた。額から汗が流れ落ちる。幸い彼女は何も気づかなかったようだ。

柏木正は驚いて言った。

「藤田社長、大丈夫ですか?病院に戻った方がいいんじゃないですか?」

柏木正の言葉が終わるや否や、二人の子供たちは緊張した様子で、

「お父さん、どこか具合悪いの?」

藤田深志は子供たちを怖がらせないように我慢した。今回は体力を大きく消耗し、精神的にも大きな打撃を受けるような出来事を経験して、体はかなり疲れていた。

「お父さんは膝が少し痛いだけだよ。疲れているだけだから、大丈夫、大丈夫。」

鈴木弘美は大きな目をくるくると回しながら、目には心配の色が浮かんでいた。

「お父さん、ちょっと我慢して。私がふーふーしたら痛くなくなるよ。」

そう言って頭を下げて彼の膝に息を吹きかけた。心理的な理由かもしれないが、藤田深志は本当に少し楽になったように感じた。もちろん、彼が苦しんでいたのは膝ではなかったが。

「お父さんもう痛くないよ。」

藤田深志は二人の宝物を見つめ、心の中に暖かい流れを感じた。

柏木正は運転が上手で、話している間にすでに安定して旧宅の庭に戻っていた。

車のドアのロックが解除されると、鈴木弘文が先に開けて降り、反対側に回ってお父さんを支えようとした。

「お父さん、僕につかまって。僕がお父さんの小さな杖になるよ。」

「うん、じゃあ弘文につかまるよ。」

藤田深志は手を軽く鈴木弘文の手に置き、足を引きずりながら家に入った。

リビングでは、おじいちゃんがよく座っていた揺り椅子がそのまま置かれていたが、今は空っぽだった。藤田深志はそれを見るのが辛く、子供たちを連れて直接階段を上がり、自分の部屋に戻った。

藤田深志はベッドに横になり、とても疲れて眠かったが、頭はとても冴えていた。

柏木正が飲むべき薬と水を持ってきて、彼は一気に口に入れて飲み込んだ。一晩中膝をついていたせいで、やっと回復しかけていた膝がまた腫れ上がっていた。

柏木正は家庭医を呼んで包帯を交換し、内出血を拭き取ってもらった。藤田深志は眉一つ動かさず、平然と二人の子供たちと話していた。

「ここはお父さんが小さい頃から育った部屋で、後にお父さんとお母さんが一緒に使った部屋になったんだ。中にはお母さんの物もあるから、あちこち見てみるといいよ。」