第552章 姉を生んだ

父娘は車から降りてエレベーターに乗り、家のドアを開けるとき、田中清彦はようやく携帯を確認して鈴木之恵から電話があったことを知った。

彼は鈴木之恵の指紋を暗証番号ロックに登録させながら、

「今度私が見つからないときは、そのまま入ってきていいよ。ここはあなたの家だから」

鈴木之恵も田中清彦と同じように、この突然訪れた親子関係を心の中で静かに消化していた。この家には一昨日子供を連れて来たことがあるが、その時は客としての立場だった。今ここに立っていると、この家の一員になっていた。

田中清彦は彼女をソファに引き寄せ、まるで逃げられるのを恐れるかのように、

「之恵、今日は帰らないで、お父さんと話そう」

そう言うと、家のお手伝いさんに指示した。

「島崎さん、3階の私の部屋の隣の一番大きな南向きの部屋をお嬢様のために準備してください！」

島崎さんは事情がわからず、二人の間で視線を行き来させた。一昨日は鈴木さんと呼んでいたのに、今日はお嬢様になっていた。

彼女は心の中で不思議に思ったが、尋ねる資格はなく、素直に階段を上がって部屋の準備に向かった。

田中清彦は熱いお茶を入れて戻ってきて、鈴木之恵の手に渡した。

「外は寒かっただろう？手を温めて」

その生硬な親しみが徐々に変化していった。父と娘は心が通じ合い、この血の繋がりは多くの障害を乗り越えて、ついに再会を果たしたのだ！

田中清彦の目には涙の膜がかかっていた。

「おばあちゃんにあげたネックレス、私が人に頼んで届けたよ。とても気に入ってくれて、機会があればお礼を言いたいって」

「おばあちゃんが気に入ってくれたなら良かった。今度何か欲しいものがあれば、また作ってあげます」

田中清彦はうんと答えた。

「あなたが作ったものなら、何でも彼女は喜ぶよ」

田中清彦は心が暖かくなり、この家がようやく家らしくなり始めた気がした。少し活気が出てきた。彼は頭の中で想像した。もし小さい頃から二人を家に引き取っていたら、二人の女の子が彼の周りで「お父さん」と呼ぶ光景はどんなだっただろうか。

娘は間違いなく田中晃よりも手がかからず、彼ともっと親密だっただろう。

「之恵、この何年間、元気にやってきたの？」

鈴木之恵は良いことだけを話した。

「すべて順調です」