「辛いです」結城暁は言った。
そして、彼は目を開けた。情欲に染まった赤い瞳が南雲泉に向けられ、声は低く掠れていた。「でも、お前がここにいると、もっと辛くなる」
「泉、俺は聖人君子じゃない。もしお前がここにいつづけるなら、自分を抑えられるとは保証できない」
南雲泉は仕方なく部屋を出た。
彼女は布団をめくって横たわった。
しかし、少しも眠気は感じなかった。
彼女の注意は全て結城暁に向けられ、中からの一つ一つの物音に耳を澄ませていた。
三十分で、中の水はもう三回も替えられていた。
きっと彼は熱くて、辛くて、だから冷水に浸かり続けているのだろう。
先ほどの、真っ赤な目をして全身が熱く燃えるような様子を思い出し、南雲泉は思わず目が潤んだ。
彼があんなに苦しんでいると思うと、彼女も辛くなった。