「はい」
結城暁は頷いた。「お爺様、約束します」
「よかった」お爺様は嬉しそうに微笑んだ。「これで安心できる」
「あの子を呼んでおくれ」
南雲泉は最後に入室した。
入り口で、彼女は必死に涙を拭っていた。
お爺様は彼女の笑顔が見たいのだと、泣いて欲しくないのだと、彼女にはわかっていた。
だから我慢しなければ。泣いてはいけない、絶対に泣いてはいけない。
やっと感情を落ち着かせ、南雲泉は精一杯笑顔を作って、お爺様の側に行き、その手を握った。
「お爺様、泉です」
南雲泉は必死に耐えていた。笑顔でいなければと自分に言い聞かせ続けていた。
お爺様に最高の姿を見せて、お爺様を喜ばせ、心配させてはいけない。
しかし、口を開くと、涙は止めどなく溢れ出した。
「泉や、泣くな。生老病死は人の世の摂理じゃ。誰もがいつかは通る道、お爺様が一足先に行くだけのこと。お前のことが一番心配でな」