第42章 南雲泉崩壊、末期肝がん

「早く、早く病院へ行って!瀬戸野さんが、おじいちゃんが倒れて救急処置中だって!」南雲泉は震える声でそう言った。

おじいちゃんはもうあんなに高齢で、体も弱っていた。

彼女には想像もできなかった。おじいちゃんが救急室に入ってしまったら、無事に出てこられるのだろうか。

怖かった。

とても怖かった。

しかし、信号に差し掛かると、結城暁が曲がらないことに気づいた。

「病院に行くでしょ!結城暁、どこに行くの?」南雲泉はその場で怒り出した。

彼女は怒りで顔が真っ青になった。

結城暁はハンドルを両手で握ったまま、相変わらず落ち着いていた。

南雲泉の慌てぶりや緊張とは対照的に、彼は少しも影響を受けていないようで、ずっと冷静だった。

「泉、慌てないで。僕のおじいちゃんを知る限り、病気じゃないかもしれない」

「小さい頃、おじいちゃんはよく病気のふりをして僕を騙したんだ。何度も騙されたよ。おじいちゃんは僕たちの離婚を止めたくて、病気を装って呼び戻そうとしているのかもしれない」

結城暁はこう説明すれば、南雲泉も少しは安心するだろうと思っていた。少なくとも落ち着くはずだと。

しかし、予想は完全に外れた。

南雲泉は激しい怒りの目で彼を睨みつけ、声も怒りに震えていた。「結城暁、何を言ってるの?」

「あなたがおじいちゃんに騙されたことがあるかどうか、どんな推測をしているかなんて関係ない。たとえおじいちゃんが演技だとしても、私は今すぐ、すぐに病院に行って、おじいちゃんの側にいきたいの」

「今すぐ病院に向かって!」

彼女の人生は、もう仮定の話に耐えられなかった。

おじいちゃんは元々体が弱く、今日会いに行った時も疲れているように見え、随分と老けて見えた。

もし本当だったら、考えるだけでも恐ろしかった。

だから、おじいちゃんにもしものことがあってはいけなかった。

たとえ嘘でも、たとえおじいちゃんが騙していても、彼女は喜んで騙されるつもりだった。

でも、おじいちゃんが健康であることを自分の目で確かめなければならなかった。

病院に着くと、南雲泉は真っ直ぐに駆け込んだ。

救急室のランプが点いているのを見た瞬間、彼女は力が抜け、壁際で崩れ落ちそうになった。

「お父さん、お母さん、おじいちゃんはどう?」南雲泉の声は、震えが止まらなかった。