「早く、早く病院へ行って!瀬戸野さんが、おじいちゃんが倒れて救急処置中だって!」南雲泉は震える声でそう言った。
おじいちゃんはもうあんなに高齢で、体も弱っていた。
彼女には想像もできなかった。おじいちゃんが救急室に入ってしまったら、無事に出てこられるのだろうか。
怖かった。
とても怖かった。
しかし、信号に差し掛かると、結城暁が曲がらないことに気づいた。
「病院に行くでしょ!結城暁、どこに行くの?」南雲泉はその場で怒り出した。
彼女は怒りで顔が真っ青になった。
結城暁はハンドルを両手で握ったまま、相変わらず落ち着いていた。
南雲泉の慌てぶりや緊張とは対照的に、彼は少しも影響を受けていないようで、ずっと冷静だった。
「泉、慌てないで。僕のおじいちゃんを知る限り、病気じゃないかもしれない」