「おじいちゃん、彼は血をたくさん流しています。きっとすごく痛いはずです」
「お願いだから、もう叩かないで」
南雲泉を見て、老人は結局心が和らいだ。
杖を下ろし、深いため息をついた。「すぐに彼を連れて行け。もう二度と会いたくない」
「はい、おじいちゃん」
南雲泉はすぐに頷き、そばにいる人に向かって言った。「瀬戸野さん、手伝ってください」
五分後、南雲泉と瀬戸野は結城暁を支えて部屋に戻った。
「痛いでしょう?」
南雲泉の声は震えていた。
あれだけ血を流したのだから、痛くないはずがない。
「ちょっと我慢してください。すぐに...すぐに傷の手当てをします」
南雲泉は急いで救急箱を探しに行った。
焦りすぎて、何カ所も探してようやく救急箱を見つけた。
救急箱を開けるときも、手が震えて慌てふためいていた。
結城暁の背中全体が血で染まり、傷跡が一本一本、縦横に交差して体中に広がっていた。
あざも至る所にあり、赤い部分や紫色の部分が点在していた。
見ているだけでも胸が痛くなるような光景だった。
普通の杖なら表面が滑らかで、叩かれても痛いだけで、せいぜい内出血や打撲程度で済むはずだ。
しかし、おじいちゃんの杖は特注の龍頭杖で、叩かれれば心臓が止まりそうなほど痛いはずだ。
「血がたくさん出ているから、服を切らないといけません」
「いいよ」
彼の承諾を得て、南雲泉はハサミを手に取り、慎重にワイシャツを切り始めた。
とても怖かった。
彼を痛がらせるのが怖かった。
誤って肉を切ってしまうのも怖かった。
そのため、全過程は戦々恐々としていて、怖くて仕方がなかった。
ようやく服を切り終え、全ての傷が目の前にはっきりと現れた時、南雲泉の目は潤んでしまった。
とても深い傷だ。きっと死ぬほど痛かったに違いない。
深く息を吸い、南雲泉は胸の痛みを必死に抑えながら、まず傷を洗浄し、消毒をして、最後に包帯を巻いた。
その間、結城暁は非常に協力的だった。
彼は歯を食いしばり、一度も声を上げなかった。
南雲泉は彼の意志の強さに感心せざるを得なかった。普通の人なら、とっくに叫び声を上げていただろう。
「包帯を巻き終わりました」包帯を結びながら、南雲泉は言った。
「ありがとう」