「覚えてる」結城暁は頷きながら言った。「ちょっと待っていて。用事があるから」
そう言うと、彼は背を向けて立ち去った。
南雲泉は彼の背中が遠ざかっていくのを見つめていた。彼が何をしようとしているのかは分からなかったが、少し待っていてと言ったということは、きっとすぐに戻ってくるはずだ。
そうであれば、待っていればいい。
どうせ二人の約束は午後二時だ。
まだ時間には余裕がある。
結城暁はほとんど小走りで結城お爺様の部屋に向かった。
彼が到着したとき、結城お爺様は木製の寝椅子で目を閉じて休んでおり、部屋には香が焚かれ、瀬戸野が傍らで仕えていた。
「お爺様」
彼が声をかけると、結城お爺様は予想通り目を開けて彼を見た。
「来たか、座りなさい」
結城お爺様の言葉が終わるや否や、突然、結城暁は彼の前に跪いた。
「お爺様、申し訳ありません。お気持ちは分かっています。離婚させたくないというお気持ちを裏切ってしまって」
「つまり、それでも離婚する気なのか?」結城お爺様は的確に問いかけた。
結城暁は跪いたまま、唇を引き締め、一言も発しなかった。
しかし、その沈黙が全てを物語っていた。
「泉が離婚したがるのも無理はない。お前のその態度では、誰だって心が冷めてしまう」
「瀬戸野、彼を起こしなさい」お爺様の声は厳しくも落ち着いていた。
瀬戸野は近寄り、身をかがめて結城暁の腕を支え、立ち上がらせた。
突然、結城お爺様は杖を取り、一撃を彼の体に加えた。
お爺様の打撃は非常に強かった。
痛みが結城暁の背中全体に広がった。
彼が耐えて、うめき声も上げず、許しを請うこともしないのを見て、お爺様はますます怒りを募らせた。
杖を振り上げ、さらに一撃を加えた。
二撃を受けて、結城暁の背中全体が火のように痛んだ。
「まだ離婚するつもりか?」お爺様は再び尋ねた。
「申し訳ありません、お爺様」
結城暁はなお強情を張り、なお固執していた。
彼はそこに立ち、松のように真っ直ぐに、眉一つ動かさず、拳を強く握り、歯を食いしばって必死に耐えていた。
お爺様は見れば見るほど、怒りが増していった。
彼は再び杖を持ち上げ、振り上げた手で打とうとした。
結城暁は振り上げられた杖を見て、唇を引き締め、歯を食いしばって耐える準備をした。