「覚えてる」結城暁は頷きながら言った。「ちょっと待っていて。用事があるから」
そう言うと、彼は背を向けて立ち去った。
南雲泉は彼の背中が遠ざかっていくのを見つめていた。彼が何をしようとしているのかは分からなかったが、少し待っていてと言ったということは、きっとすぐに戻ってくるはずだ。
そうであれば、待っていればいい。
どうせ二人の約束は午後二時だ。
まだ時間には余裕がある。
結城暁はほとんど小走りで結城お爺様の部屋に向かった。
彼が到着したとき、結城お爺様は木製の寝椅子で目を閉じて休んでおり、部屋には香が焚かれ、瀬戸野が傍らで仕えていた。
「お爺様」
彼が声をかけると、結城お爺様は予想通り目を開けて彼を見た。
「来たか、座りなさい」
結城お爺様の言葉が終わるや否や、突然、結城暁は彼の前に跪いた。