第48章 あなたたちは幸せになれない

藤宮清華は首を振りながら、唇を噛んでいた。

涙が頬を伝って流れ落ち、結城暁を見つめる彼女の姿は、まるで可哀想な子犬のようだった。

その様子は、どんな男性でも心を痛め、罪悪感を覚えるだろう。

「すまない、清華。私が君を裏切ってしまった」

「裏切ったと分かっているなら、なぜ別れようとするの？理由を知りたいわ。何も分からないまま別れるなんて嫌よ」

結城暁は彼女を見て、胸が痛んだ。

藤宮清華は涙を拭い、結城暁の手を掴んだ。「理由を教えて。私には知る権利があるわ。これは私が知るべきことよ」

「どうしても知りたいのか？」

「ええ、絶対に知りたいの」

ため息をつきながら、結城暁は心を刺すような痛みと共に口を開いた。「祖父が亡くなった。肝臓がんが原因だったとはいえ、あの日、私が離婚を主張して逆らわなければ、祖父は今も生きていただろう」

「清華、私は既に君と祖父を裏切ってしまった。南雲泉は今の私の妻だ。彼女までも裏切ることはできない」

「違うわ」藤宮清華は激しく首を振った。「暁、そんなことないわ」

「お祖父様の死はあなたのせいじゃない。すべての責任を背負わないで。そんなあなたを見るのが辛いわ。あなたの南雲泉への気持ちは責任感だけで、愛なんてないはず。無理に一緒にいても幸せにはなれないわ」

「あなたが愛しているのは私よ。一生を共にしたい人も私でしょう。暁、お願い。別れないで」

藤宮清華の涙は止まることを知らなかった。

まるで糸の切れた数珠のように、涙が次々と零れ落ちた。

目は泣きすぎて真っ赤に腫れていた。

結城暁はついに我慢できず、優しく彼女の頬の涙を拭った。「清華、もう言うな。私の決意は固い」

「以前のように海外に行くこともできる。そうすれば二度と会うこともない。ここに残るのなら、これからは私は南雲泉の夫としてしか存在しない。君とは何の関係もない」

「本当にそうしなければならないの？」藤宮清華は必死に首を振った。「嫌よ、そんなの嫌」

「あなたから離れたくないし、他人同士になんてなりたくない」

「言うべきことは言った。南雲泉が家で待っている。私は行く」

結城暁は立ち上がり、容赦なく背を向けて去ろうとした。

突然、後ろから大きな音が聞こえた。

「あっ...あぁ、熱い、痛い」

次の瞬間、藤宮清華の哀れな声が聞こえてきた。