確かに、彼女は祖父の遺志のためにこの結婚を守り、彼らの家庭を守りたいと思っていた。
でも、この結婚を維持すると決めた以上、ただの形だけのものであってほしくなかった。
彼が祖父のために結婚を続けることも、彼女を愛していないことも受け入れられる。でも……
結城暁が彼らの結婚期間中に藤宮清華と付き合うことは、受け入れられなかった。
もしそうなら、自分は一体何なのだろう?
結城暁が出て行って間もなく、南雲泉は桐山念から電話を受けた。
「泉、いつもの場所でコーヒーでも飲まない?私、帰ってきたの」
「本当に帰ってきたの?来月まで撮影があるって言ってたじゃない?」南雲泉は意外そうだった。
「そのはずだったんだけど、主演俳優がワイヤーアクション中に怪我をしちゃって、しばらく撮影中断になったの」