「何?」
南雲泉は呆然としていた。自分の耳を疑った。
しかし、反応する間もなく、瀬戸奏太に車の中へ押し込まれた。
車に乗り込んでも、南雲泉はまだ呆然としていた。
その時、前の席から元気いっぱいの青年が笑いながら口を開いた。「隊長、どういうことですか?女性を近づけないはずの隊長が...まさかこの方が奥様?」
「余計なことを。」男は低く吠えた。
前の青年は即座に大人しく口を閉ざした。
しばらくの間、南雲泉は呆然としたままだった。
数分後、やっと我に返り、隣の男を見た。「なぜ私を助けてくれたんですか?」
「もし私の推測が正しければ、あなたの携帯は電池切れですよね?」
「はい。」
「助けるなら最後まで。病院まで送るのも道順だし。」
「ああ。」
そういうことか。
前の柏木朋也は深いため息をついた。