第60章 結城暁、離して

次の瞬間、車の窓がゆっくりと下がり、結城暁の顔が見えた。

彼の顔は冷たく、温もりのかけらもなく、月明かりの中でより一層氷のように冷たく見えた。

「結城暁?」南雲泉は彼を見て、とても驚いた。「どうしてここに?」

今日は学校に泊まると言ったはずなのに。

迎えに来なくていいと言ったのに。

この二日間、どんなに疲れて辛くても、彼の邪魔をしないように一人で耐えてきた。

病院のベッドで一人横たわっているときでさえ、心は静かで波一つ立てなかった。

だから、自分に言い聞かせていた。落ち着いているし、もう彼は必要ないのだと。

でも今、彼が突然目の前に現れた時、南雲泉は自分が間違っていたことに気づいた。

気にしていないのではなく、むしろ気にしすぎていたのだ。

だから、必死に自分の心を抑え込んで、考えないようにしていた。