結城暁は一目見ただけで携帯の電源を切り、メッセージには一切返信しなかった。
南雲泉は探るように尋ねた。「何かあったの?携帯が鳴りっぱなしだったけど」
「何でもない」
「そう」
彼が言わないなら、彼女も特に聞くことはなかった。
南雲泉が髪を乾かした後、結城暁は部屋の明かりを消し、二人は同時にベッドに横たわった。
部屋の中は静かだった。
しばらくの間、南雲泉は二人の呼吸がはっきりと聞こえるように感じた。
布団をしっかりとかけ、南雲泉は目を閉じ、もう何も言わなかった。
しかし、結城暁の携帯が絶えず振動し、画面も点灯し続けているのを感じることができた。
彼は横を向いて、携帯を見た。
そして、彼の周りの空気が重くなった。
どれくらい経ったか覚えていないが、彼女は微かな音を聞いた。
南雲泉は少し目を開け、結城暁がすでにベッドから起き上がり、服を着替えているのを見た。
やはり彼は承諾したのだ。
この時間に起きるということは、藤宮清華に会いに行くことを決めたということだろう。
南雲泉の体は布団の中で硬くなった。彼女は今この瞬間、まるで彫像のように、木のように布団の中に横たわり、少しも動くことができなかった。
まるで彼に気づかれることを恐れているかのように。
目も合わせるように閉じていなければならなかった。
おそらく数分後、結城暁の服装は整ったようだった。
次の瞬間、南雲泉の耳元でドアが閉まる音が聞こえた。
彼が出て行ったことを、彼女は知っていた。
結局、彼は行ってしまった。
しかも何も彼女に告げずに、彼女が寝ている間に隠れて行ったのだ。
きっと彼は彼女が寝ていて、何も知らないと思っているのだろう。
笑えることに、彼女は全て知っていた。
「結城暁」南雲泉は布団を握りしめ、苦しそうに彼の名前を呼んだ。
突然、外からゴロゴロという雷鳴が聞こえ、雨が降りそうだった。
南雲泉は自分を抱きしめてベッドに座っていた。部屋は真っ暗で、何も見えなかったので、雷鳴がより一層はっきりと聞こえた。
結城暁が病院に着いた時には、雨はすでに降っていた。
病室はがらんとしていて、藤宮清華の姿はどこにもなかった。
医師に尋ね、看護師に尋ね、最後に得た答えは、藤宮清華は外にいるということだった。