第57章 南雲泉が気を失った

「赤ちゃん、いい子にしていてね」

「赤ちゃん、安心して。ママは強いから、何も起こさせないわ」

南雲泉は両手で、ずっとお腹を守り続けていた。

その間、彼女は結城暁に電話をするべきか迷い続けていた。

かけるべき?

彼女は何度も自問自答した。

一瞬、実際に彼の電話番号を見つけて発信していた。

しかし相手が出そうになった時、すぐに切ってしまった。

病院に着くと、南雲泉はすぐに受付を済ませた。平日だったため、幸い混んでいなかった。

順番を待っている間、彼女はもう耐えられないほど具合が悪くなっていた。頭がぼんやりして、めまいがし、今にも気を失いそうな錯覚さえ感じていた。

待合室は人が多く、空気が淀んでいた。

南雲泉は立ち上がり、外に出ようとした。

ロビーに出たその時、救急患者が運ばれてきた。

医師と看護師が患者を運びながら、大声で叫んでいた。「どいてください!早くどいてください!」

南雲泉は緊急事態だと分かっていた。この時の救急処置の一分一秒が非常に貴重だと知っていたので、救急患者が彼女の方向に運ばれてくるのを見て、考える間もなく、すぐに道を開けた。

おそらく急ぎすぎたせいで、南雲泉は道を開ける時に足を捻ってしまい、急に横に倒れそうになった。

幸い近くに大きな柱があり、それを必死でつかんだおかげで転倒は免れた。

傍らでは、医師と看護師が患者を猛スピードで救急室へと運び、後ろには制服を着た警察官たちが電光石火のように続いていた。

南雲泉がこんな光景はテレビでしか見たことがないと思った瞬間、目の前が真っ暗になった。

次の瞬間、彼女は意識を失っていた。

「隊長、誰か倒れました」

「さっき私たちに道を譲ってくれた人みたいです」柏木朋也が言った。

瀬戸奏太は隊列から離れ、風のように南雲泉の元へ駆け寄り、彼女を抱き上げて救急室へと直行した。

救急室の外で、柏木朋也は長い間考えていたが、突然何かを思い出したように頭を叩いた。「隊長、思い出しました。どうしてこの美人が見覚えがあると思ったんです。この前私たちの車に乗った美人じゃないですか?」

「隊長、あなたと彼女は本当に縁があるんですね」

柏木朋也は興奮して言い終わったが、瀬戸奏太の表情は厳しく、何の変化も見せなかった。