第81章 結局、彼女こそが余計者だった

「どこにいるの?」

案の定、結城暁は大声で叫んだ。

藤宮清華は口角に得意げな笑みを浮かべ、軽く笑うと、もう返事をせずに電話を切った。

結城暁は携帯を手に取り外に向かおうとしたが、南雲泉のことを思い出し、部屋に戻った。

数分後、南雲泉が浴室から出てきた。

彼女を見るなり、結城暁はすぐに手に持っていた服を渡した。「着替えて」

「え?もう寝るのに、なんでこの服に着替えるの?」南雲泉は当然理解できなかった。

「とりあえず着替えて、急用があるから、ちょっと出かけよう」

二人が車に乗ってから、結城暁は口を開いた。「泉、正直に言わなきゃいけないことがある。清華が危険な状態かもしれない」

「私は清華との関係を断ってほしくないって気持ちはわかってる。嘘はつきたくない。私も彼女を見捨てることはできないんだ」

「彼女の足の事故以来、藤宮家には本当に彼女を心配する人がいなくなった。私まで彼女を見捨てたら、彼女は生きていけないかもしれない。それに、さっきの様子がとても変だった。行かなければならない」

結城暁は南雲泉の手を取り、手のひらに包んだ。「泉、嘘はつきたくない。だから、一緒に来てくれないか?」

南雲泉の小さな顔は車内の暗がりに隠れていたため、結城暁は彼女の表情がよく見えなかった。

突然、彼女の声が聞こえた。「私が行きたくないって言ったら?」

「もし本当に行きたくないなら、その…」

結城暁の言葉が終わらないうちに、南雲泉は突然手で彼の口を塞ぎ、首を振った。「言わないで、答えは聞きたくない」

そう、彼女は怖くなったのだ。

臆病者と言われようと、弱いと言われようと。

ようやく二人の間に温もりが生まれたのに、この件で関係が再び冷え切ってしまうのは避けたかった。

この瞬間、答えはもう重要ではなかった。

南雲泉はただ、彼を藤宮清華に譲りたくなかった。だから一緒に行くことにした。

「行くわ」彼女は言った。

結城暁は彼女をしっかりと抱きしめ、声を震わせた。「ありがとう、泉」

「寛容に理解してくれてありがとう」

実は南雲泉は言いたかった。ありがとうなんて言わないで。

私は少しも寛容じゃない。愛する人に対して、私はとても狭量で、誰とも少しも分け合いたくないの。

承諾したのは、寛容だからじゃない。愛しすぎて、失うのが怖すぎるから。