しかし、南雲泉は失望した。
結城暁は彼女を一瞥しただけで、すぐに視線を外し、藤宮清華を抱きかかえて急いで出て行った。
「ふん……」
彼女は苦笑いを浮かべ、心の中がどんな気持ちなのか分からなかった。
椅子の端を掴みながら、彼女は苦労して立ち上がった。
やっと立ち上がると、痛みで眉をしかめ、脚にはヒリヒリとした痛みが走った。
必死に耐えながら、彼女は外に出た。
レストランの入り口に着くと、外には救急車が停まっていた。
結城暁は藤宮清華を車内に抱き入れ、人混みの向こうから、一目で南雲泉を見つけた。
彼女の歩みは遅く、とても苦しそうだった。
結城暁の脳裏には、先ほど個室で転んだ彼女の姿が浮かんだ。部屋には分厚いカーペットが敷かれていたので、転んでも少し痛いだけで大丈夫だろうと思っていた。
しかし今見ると、彼は間違っていた。南雲泉は重傷を負っていた。
彼女の状態は全く良くなく、非常に心配な様子だった。
彼女を見て、結城暁は無意識に近寄ろうとした。
しかし、そのとき藤宮清華が突然彼の手を掴み、可哀想そうに言った。「暁、行かないで、お願い行かないで。」
「怖いの、本当に怖いの。私のそばにいて?」
藤宮清華が涙人形のように泣き、体を震わせながら、小さな手で彼をしっかりと掴んでいた。まるで最後の救いの藁にすがるかのように。
結城暁は結局足を止め、なだめるように言った。「分かった、行かないよ。」
「大丈夫、何も心配いらない。」
「うん。」
藤宮清華は手を伸ばし、彼の腕全体をしっかりと抱きしめ、少しも離そうとしなかった。
すぐに救急車のドアが閉まった。
南雲泉はそのドアがゆっくりと閉まるのを見つめ、藤宮清華が結城暁の腕を抱きしめる姿が、徐々に彼女の視界から消えていくのを見た。
ついに耐えきれず、涙が目を曇らせた。
涙で霞んだ視界の中、もやを通して、彼女は結城暁が自分から遠ざかっていく様子を見つめた。どんどん遠くへ、遠くへ……
すぐに救急車のサイレンが鳴り響き、車は道路の真ん中で急速に消えていった。
そして彼女は、まだレストランの入り口に立ち、ぼんやりと彼を見つめていた。
いや、彼らが少しずつ遠ざかっていくのを見つめていた。
車が去ってから十数分が経っていたが、南雲泉はまだ同じ場所に立ち尽くしていた。