しかし、南雲泉は失望した。
結城暁は彼女を一瞥しただけで、すぐに視線を外し、藤宮清華を抱きかかえて急いで出て行った。
「ふん……」
彼女は苦笑いを浮かべ、心の中がどんな気持ちなのか分からなかった。
椅子の端を掴みながら、彼女は苦労して立ち上がった。
やっと立ち上がると、痛みで眉をしかめ、脚にはヒリヒリとした痛みが走った。
必死に耐えながら、彼女は外に出た。
レストランの入り口に着くと、外には救急車が停まっていた。
結城暁は藤宮清華を車内に抱き入れ、人混みの向こうから、一目で南雲泉を見つけた。
彼女の歩みは遅く、とても苦しそうだった。
結城暁の脳裏には、先ほど個室で転んだ彼女の姿が浮かんだ。部屋には分厚いカーペットが敷かれていたので、転んでも少し痛いだけで大丈夫だろうと思っていた。