「はい、結城社長と藤宮さんは中にいらっしゃいます」と桐山翔が答えた。
南雲泉はドアを開けて中に入った。
部屋は広く、彼女が入っても誰も気付かないほどだった。
数分後、南雲泉はようやく奥まで歩いていった。
目に入ったのは、結城暁と藤宮清華が抱き合う姿で、まるで生死を共にする恋人同士のようだった。
想像はしていたものの、二人が抱き合う様子を想像することと、実際に目にすることは全く別物だった。
部屋の中は静かだった。
南雲泉はそこに立ち尽くし、二人が抱き合う姿を見つめていた。
彼女は、二人がいつ自分に気付くのか見てみたかった。
彼女が知らなかったのは、藤宮清華は既に気付いていたが、気付かないふりをしていただけだということだった。
そして結城暁は、何度か藤宮清華を押しのけようとしたが、引き止められていた。