第102章 珍しく、彼女とテレビを見る

「どうしてあなたが電話に出たの?暁はどこ?」藤宮清華は冷たい声で詰問した。

「彼は食器を洗っています。」

暁が自ら食器を洗うなんて?

自分がいない間の南雲泉と暁の関係を想像すると、藤宮清華は歯ぎしりするほど腹が立った。

「藤宮さん、他に用がないのでしたら、切らせていただきます。」

「用がないって、どうしてわかるの?もし用があったら?」

「そうですか?」南雲泉は冷笑した。「では藤宮さん、どんな用件かおっしゃってください。私と暁は夫婦ですから、私に話しても同じことです。」

「残念だけど、私は暁に直接伝えたいの。」

藤宮清華は意図的に「直接」という言葉を強調して、はっきりと発音した。

南雲泉は怒るどころか笑みを浮かべた。「それは藤宮さんに機会があればの話ですね。私が知る限り、暁はあなたの電話なんて取りたくないみたいですよ。ついでに一言忠告させていただきますが、女性は少しは恥じらいを持つべきです。既婚男性を誘惑するという罪は、いつの時代も聞こえが悪いものです。」

「藤宮さん、自重なさるなら、私も面倒なことにはしたくありません。でも、もしあなたが何度も私の結婚生活を壊そうとするなら、容赦はしませんよ。」

誘惑?

「南雲泉、はっきり言いなさいよ。誰が誘惑したって言うの?」

藤宮清華は「誘惑」という言葉に半死半生の怒りを覚えた。

「誰が誰を誘惑したのか、自分の心に聞いてみてください。」

そう言い終えると、藤宮清華に反論の機会を与えず、南雲泉は電話を切った。

電話を置いた途端、結城暁が傍に立っているのに気付いた。

南雲泉は携帯を彼に差し出した。「あなたの電話に出ました。気になるなら、自分で折り返して説明してください。」

「必要ない。」

結城暁はそう言って、携帯を受け取ろうともしなかった。

その後、彼は南雲泉の隣に座った。

珍しく、二人でリビングでテレビを見ることになった。

南雲泉は甘いラブコメドラマを見ていて、結城暁も彼女に付き合って一緒に見ていた。

軽い恋愛コメディだったので、南雲泉はとても楽しそうに見ていて、しょっちゅう大笑いしていた。

結城暁は横で静かに彼女の笑顔を見つめていた。その笑顔は輝かしく、明るかった。

その瞬間、彼は穏やかな時が流れているような感覚を覚えた。