「結城暁、何をするの?」
彼の足取りが速すぎて、南雲泉はついていくのが大変だった。
それに、彼が突然彼女を二階に連れて行く理由が全く分からなかった。
「ゆっくり歩いて、テレビまだついてるわ」と泉は言った。
結城暁が一声かけると、テレビはすぐに消えた。
寝室に着くや否や、結城暁はドアを閉め、彼女の手を引いて、ドアに押し付けた。
「喉が渇いた」
彼の黒い瞳が、深く泉を見つめていた。
「じゃあ、お水を持ってくるわ」
「いらない」
結城暁はそう言うと、頭を下げて直接キスをした。
南雲泉は目を見開き、ほとんど信じられない思いだった。
つまり、彼がこんなに急いで彼女を連れてきたのは、他の理由ではなく、ただ...ただ...彼女にキスがしたかっただけなのだ。
もし彼の服をつかんでいなかったら、もしドアに寄りかかっていなかったら、南雲泉は倒れていたに違いないと真剣に疑っていた。