彼女のバッグには小さなミネラルウォーターが2本入っていて、そのうちの1本は未開封で、もう1本は少しだけ飲んでいた。
ほんの少ししか飲んでいなかったので、大きな違いは感じられず、取り出すときも特に気にしていなかった。
まさかこんな小さな不注意が、本当に間違いを引き起こすとは。
南雲泉が空のペットボトルを見つめ、何か言いたげな様子を見て、瀬戸奏太は尋ねた。「どうしたの?」
「あの、私...」
言い出したら、あまりにも恥ずかしすぎる。
結局、南雲泉は話題を変えた。「なんでもないの、ただあなたの調子はどう?って聞きたかっただけ」
「僕は大丈夫だよ。これくらい何でもない。むしろ君の方は、大丈夫?」
瀬戸奏太はそう言って、南雲泉に視線を向けた。
しかし見るなり、すぐに目をそらした。
そして軽く咳払いをして、静かに注意を促した。
南雲泉は少し呆然としていて、最初は気づかなかった。
瀬戸奏太は再び口を開いた。今度は遠回しながらも直接的に:「君の服...」
南雲泉はようやく彼の視線の先にある自分の服に目を向けた。見た瞬間、両手で身体を抱きしめ、顔が真っ赤になった。
唇を噛みながら、顔は桜のように赤くなっていた。
心の中では、恥ずかしさで死にそうだった。
南雲泉よ南雲泉、あなたってなんてバカなの。こんな大雨なのに、どうしてこのことを考えなかったの?しかも他人に指摘されるなんて。
それも二度も指摘されてようやく気づくなんて?
本当にバカすぎる!
彼女は今日、白いシルクのブラウスを着ていた。シルクの生地で、とても薄くて通気性がよかった。
普段なら何の問題もないのだが、雨に濡れてしまった今、服は言うまでもなく薄く透けていた。
さらに重要なことに、下着の色まではっきりと透けて見えていた。
今では本当に人前に出られないと感じていた。しかも、着替えも持ってきていないようだった。
南雲泉は唇を噛みながら、眉をしかめて、これからどうすればいいか考えていた。
瀬戸奏太は上着を脱ぎ、東屋の端に行って、中の水分を必死に絞った。
何度も何度も絞った後、上着を広げて南雲泉に差し出した。「少し濡れてるけど、気にしなければ着てみて」
「ありがとう!」
今回、南雲泉はもちろん断る理由がなかった。
上着を受け取ると、体を回転させて着た。