第123章 結城社長、若奥様に異変が

彼女のいない未来を考えただけで、息が詰まるほど辛かった。

彼はずっと、彼女は人生において有っても無くてもいい存在だと思っていた。いてもいなくても、何も変わらないと。

しかし、彼女がもうこの家に現れることも、彼の人生に、彼の世界に存在することもないと思うと、胸が空っぽになったような気がした。

それは、とても大切なものを失ったような感覚だった。

なぜなのか、彼にはわからなかった。

ただ、離婚したくない、少しも望んでいないということだけは分かっていた。

「妻よ、ごめん。僕が君を守れなかった。」

結城暁は南雲泉の手を握りしめ、一筋の涙が床に落ちた。

この夜、南雲泉はベッドで眠り、結城暁は彼女の隣の床に座って、彼女の手を握り続けていた。

南雲泉が目を覚ました時、窓から微風が吹き込んでいた。風が薄手のカーテンを揺らし、まるで蝶のように美しく舞っていた。