第146章 南雲泉が去った

「結構です」南雲泉は断った。

ため息をつくように、結城暁は言った。「たった一晩だけだよ。私が何かするとでも思うのか?」

南雲泉は唇を噛んで、何も言わなかった。

何かが起こるのを恐れているわけではない。ただ、長く一緒にいればいるほど、別れがつらくなると思っただけだ。

「君はここに残って、私は会社で寝る。明日の朝、送っていくから」

彼がそこまで言うなら、南雲泉はただ頷くしかなかった。「わかりました」

翌朝早く、南雲泉は目を覚ました。時計を見ると、まだ6時過ぎだった。彼女は麺を茹でて、簡単な朝食を済ませた。

全ての荷物を片付け終わっても、まだ8時にもなっていなかった。

スーツケースを玄関まで運んだとき、彼女は我慢できずに2階に上がった。

2階から下を見下ろしながら、彼女は感慨深い気持ちになった。初めてこの部屋に入った時のことを思い出した。どれほど期待に胸を膨らませ、心躍らせていたことか。