場所に着くと、結城暁は狂ったようにインターホンを押し続けた。
しかし、一度、二度、数分が経過しても、何の反応もなく、誰も出てこなかった。
彼は手でドアをノックしてみたが、やはり返事はなかった。
携帯を取り出し、南雲泉に電話をかけた。
しかし、南雲泉の電話には誰も出なかった。
南雲泉はタクシーに乗っていた。桐山翔が去った後、彼女は服を少し片付け、小さなスーツケースを持って空港へ向かった。
彼女は念と約束していた。彼女の所に数日遊びに行くことを。
ちょうど念が撮影している場所は南の海沿いで、彼女の好きな海があったので、念に誘われた時、深く考えずに承諾した。
搭乗前、南雲泉は結城暁からの不在着信を見たが、軽く一瞥しただけで、すぐに携帯の電源を切り、バッグにしまった。
飞行機は雲の中へと飛び込んでいった。窓の外の純白な雲を見ていると、まるで大きな柔らかい綿のようで、南雲泉の気持ちは少し晴れてきた。