結城暁が部屋に戻った時には、すでに深夜で、南雲泉はすでに眠っていた。
彼は静かに床に敷いた布団に横たわった。寝るというよりは、ただ横になっているだけだった。
この夜、彼はほとんど眠れず、一睡もできなかった。
翌朝早く、二人は荷物をまとめて帰路についた。
出発する時、南雲泉は最後にここの全てを見つめ、その眼差しには深い愛着が宿っていた。
ここはとてもシンプルだったが、おじいちゃんとおばあちゃんの思い出があるため、この質素な小屋は特別な魅力を放っていた。
これは彼のおじいちゃんとおばあちゃんの旧居で、離婚後は、もう二度と来ることはないだろう。
これからは、彼は他の人を連れてくるかもしれない。愛する女性を、次の妻を、そして子供たちを……
そう考えると、南雲泉は突然胸が針で刺されるような痛みを感じた。
そうだ、すぐに全てが過ぎ去った雲のようになる。彼女に何を気にする権利があるというの?
彼女のものではないものは、最初から掴むことができなかったのだ。
「行きましょう」南雲泉は振り返った。
二人は早めに出発したため、飛行機が到着したのは午前10時頃だった。
飛行機を降りると、南雲泉は結城暁を見つめて尋ねた:「今日、時間ありますか?」
「時間はある」
「なら、今日がいい日だと思います。一緒に両親のところに行って、証明書を取って、手続きを済ませましょう」
その言葉を聞いて、結城暁の背の高い体は雷に打たれたかのように、その場に凍りついた。
彼女の決意が固いことは分かっていた。離婚を望んでいることも。
しかし、こんなにも早く、飛行機を降りたばかりで急いで手続きをしたがるとは思わなかった。
彼女はそれほどまでに待ちきれないのか?
胸の中は、潮が逆流するように、塩辛く、苦く、耐え難いほどだった。
スーツケースを強く握り締め、結城暁の長い指は力が入りすぎて真っ白になった。しばらくして、やっと喉から苦しそうに一言絞り出した:「わかった」
二人は一緒にタクシーに乗り、実家へ向かった。
到着した時、雲居詩織と結城明彦は家にいなかった。これは証明書を取るのに都合が良かった。
南雲泉はほっとし、結城暁もほっとした。彼は言った:「両親がいないなら、また今度来ましょう」