結城暁は携帯を戻し、窓の外を見て言った。「雨が少し小降りになってきたようだ。傘一本だけでも、早く走れば、そんなに濡れないだろう」
南雲泉は突然、大雨の中で念を探しに行った時のことを思い出した。全身びしょ濡れになって、寒さで震えていた。
あの感覚は、本当に耐え難いものだった。
特に強風が体に当たると、まるで刃物で切られるような痛みだった。
南雲泉が何も言わないのを見て、結城暁の心は沈んでいった。
彼は言った。「早く休んでくれ。私は行くよ」
そう言って、彼は背を向けて立ち去ろうとした。
その時、咳の音が南雲泉の耳にはっきりと届いた。
「風邪を引いているの?」彼女はついに我慢できずに尋ねた。
「少しね」結城暁は頷き、すぐに説明を加えた。「軽いものだよ。大したことない」
南雲泉は彼が以前風邪を引いた時のことを思い出した。最初は鼻水が少し出て咳が出る程度だったのに、結局収まらなくなり、最後は断続的に長い間咳が続いてやっと治った。