「あなたにあげたものだから、それはあなたのものよ」
結城暁は譲らず、強引にジュエリーボックスを南雲泉に押し付けた。
南雲泉は受け取らず、同じように主張した。「私のものではないものは、受け取りません」
それに、二人はもう離婚したのだから、これを受け取るなんてどういうことだろう?
「もしこのことのために来たのなら、帰ってください!」
「俺を追い出すのか?」結城暁は拳を握りしめ、信じられない様子で彼女を見つめた。
その黒い瞳は今にも火を噴きそうだった。
軽く笑い、突然、彼は声を出して笑い、整った顔で彼女を見つめた。「南雲泉、俺は本当にマゾだな」
「お前の言う通りだ。お前のものじゃないものを、確かに無理強いするべきじゃなかった。俺、結城暁からの贈り物を欲しがる女は山ほどいるし、結城家に入りたがる女も大勢いる。なぜお前にこだわる必要がある?」
「いいだろう、今すぐ彼女たちにあげてやる」
南雲泉が最初に思い浮かべたのは藤宮清華だった。
彼女の顔は一瞬にして血の気が引き、真っ白になった。
もし隣のソファーにつかまっていなければ、立っていられなかっただろう。
しばらくして、やっと自分の声を取り戻した。「その通りです。結城社長のファンは多いですから、私なんて取るに足りない存在です。ましてやあなたには心の中の白月光がいるのですから」
「結城暁さん、実はあの時からもう私と離婚したかったんでしょう?引き延ばしていたのは、ただ心の中の壁を越えられなかっただけで、おじい様との約束を裏切ることを心配していただけ。今はよかったですね、藤宮清華さんのところへ行って、プロポーズできます。すぐに一緒になれますよ」
結城暁は拳を握りしめ、目からは火が出そうだった。
口から出る声は歯を食いしばるような調子だった。「それが、お前の言いたかったことか?」
「それがあなたのやりたいことじゃないんですか?」南雲泉は反問した。
離婚も済んで、もう婚姻の自由があるのだから、他人のことに口を出す権利なんて彼女にはない。
「ふん……」結城暁は冷笑し、彼の瞳には少しの温もりもなく彼女を見つめた。「いいだろう、とてもいい」
「南雲泉、これがお前の望みならば、その通りにしてやろう」
「私はいつ、これが私の……」望みだと言ったの?
南雲泉が口を開き、言葉を言い終わる前に。