第25章 月よ、真子を責めないで

「月、真子を責めないで」

病院の高級病室で、詩織は急いで駆けつけた男性にそう泣きながら言った。

高橋真子は両手を背中に回し、目を伏せたまま、黙って嵐の到来を待っていた。

案の定、すぐに彼女は藤原月に引きずり出され、階段の通路に押し付けられた。

「一体何を彼女にしたんだ？刺激を与えてはいけないと言っただろう？」

藤原月は彼女の喉を掴み、まるで暗闇から現れた閻魔様のように、詰問し、同時に罪を定めるかのように言った。

高橋真子は冷たい壁に両手をつき、目の前で自分を絞め殺そうとする人を見つめた。この瞬間、もはや何の幻想も抱けなかった。

詩織が突然目の前で倒れた。重病を患っている人なのに。

先ほど大勢の医師が病室に駆け込んで救急処置を行った時、彼女にはそんな予感があった。もし詩織に何かあれば、自分も生きてはいられないだろうと。