高橋真子は退社時にまた藤原月に会うとは思わなかった。彼は黒いコートを着て、助手席のドアに寄りかかり、テレビ局の方を向いていたが、目はライターを見つめていた。
ふん!大人なのにライターで遊んでいるなんて!
高橋真子の心臓は激しく鼓動していた。確かに彼には彼女を魅了する資本があった。厚手の長いコートでも彼の長い脚は隠せず、端正な顔立ちも隠せなかった。
大森千夏と木村清が後ろにいて、彼女を呼ぼうとしたが、彼女が藤原月と向かい合っているのを見て、立ち止まった。
まだ日は暮れていなかったが、風で彼女の長い髪が顔を隠していた。
高橋真子は手を上げて顔の前の乱れた髪を耳の後ろに掛け、彼に尋ねた。「私が残したメッセージ、見なかったの?」
「見たよ。でもおばあちゃんが会いたがってるんだ。君に会いに来てほしいって」
「私一人でも行けるわ!」
高橋真子はそんな大したことじゃないと思った。
「ああ。でも他にも話したいことがある。先に車に乗って」
藤原月は言いながら彼女のためにドアを開けた。
高橋真子は彼が本当に用事があるようだと思い、彼の車に乗り込んだ。
藤原月は彼女のためにドアを閉めたが、運転席に向かう途中、階段に立っている男を一瞥した。その男の目に痛みを見つけ、気分よく運転席に回り込んで乗り込んだ。
二人が出発した後、藤原月は数枚の写真を彼女に渡した。
高橋真子はそれを受け取り、木村清との写真を見て思わず動揺し、彼の方を向いて尋ねた。「誰かに撮らせたの?」
「私が撮らせたなら、わざわざ君に見せて知らせるかい?」
藤原月も彼女を見て反問した。
高橋真子もそうだと思い、さらに写真を見続けた。全て今朝の二人の写真だった。
「誰が撮ったのかわからないが、メディア会社に送られてきた。私は前から各社に君のスキャンダルは報道しないよう言っておいたから、私のところに送られてきたんだ」
「……」
高橋真子は彼の言葉を聞いて幻覚を見た気がした。彼はこうして彼女を守っているのか?なぜ彼女を守るのだろう?
通常、男性がこうして女性を守るのは、恋をしているからだ!
高橋真子は彼のことを考えすぎないようにし、すぐに写真を閉じた。「ありがとう」