高橋真子は退社時にまた藤原月に会うとは思わなかった。彼は黒いコートを着て、助手席のドアに寄りかかり、テレビ局の方を向いていたが、目はライターを見つめていた。
ふん!大人なのにライターで遊んでいるなんて!
高橋真子の心臓は激しく鼓動していた。確かに彼には彼女を魅了する資本があった。厚手の長いコートでも彼の長い脚は隠せず、端正な顔立ちも隠せなかった。
大森千夏と木村清が後ろにいて、彼女を呼ぼうとしたが、彼女が藤原月と向かい合っているのを見て、立ち止まった。
まだ日は暮れていなかったが、風で彼女の長い髪が顔を隠していた。
高橋真子は手を上げて顔の前の乱れた髪を耳の後ろに掛け、彼に尋ねた。「私が残したメッセージ、見なかったの?」
「見たよ。でもおばあちゃんが会いたがってるんだ。君に会いに来てほしいって」