第71章 魅惑的

高橋真子は彼の言葉が聞き取れなかったが、尋ねようとした時に彼の携帯が鳴り、彼女は口を閉じた。

小林詩織からだと思った。

彼は電話に出て立ち去ったが、しかし……

「お客様、ゴールドメイドサービスの清掃員でございます。」

「ああ！靴カバーを履いてから入って、まずトイレをきれいに掃除して、中の服は全部捨ててください！」

藤原月は指示を出した。

「はい！」

家政婦は使い捨ての靴カバーを取り出して履いた。

高橋真子は彼が誰かと話しているのを聞いて出てきて、道具を持って家に入ってきた人を見て思わず尋ねた。「あなたは？」

「私は……」

「掃除に来たんだ。仕事を始めてください！」

藤原月は相手の言葉を遮って指示した。

高橋真子は疑わしげに清掃員が彼女のトイレに入るのを見つめ、それから黙って藤原月を見た。「あなたが頼んだ家政婦？」

「渡辺秘書に頼んでもらったんだ！少し休んでいて、私が見てくる！」

「何を見るの？」

高橋真子は思わず彼について行き、トイレの入り口で一緒に立った。

「中の全ての隅々まで消毒しないといけない、この件については上司から指示があったはずですよね？」

「旦那様、奥様、ご安心ください。上司から全ての隅々をきれいにするように言われています。天井まで消毒殺菌させていただきます。」

40代の清掃員は気持ちよく返事をした。

藤原月は「奥様」という言葉を聞いて、その人を見つめ、最後に少し満足げに頷いた。

高橋真子もその二文字に胸が突かれる思いがしたが、彼女がより気になったのは消毒殺菌のことだった。

実は彼女の家には菌なんてないのに！

中で清掃員がゴミ袋に入れている服を見て、我慢できなくなり、そのゴミ袋を指さして言った。「男性の服だけ捨てて、女性の服は返してください。」

あれは彼女が最近買ったばかりで、スタジオ入りのために特別に買った高価なものだった。

藤原月は彼女を見た。「また言うことを聞かないつもりかな？」

高橋真子は「……」

「若いお二人は面白いですね。お二人で決めてください。私は掃除を始めさせていただきます。」

清掃員はそう言ってドアを閉めた。