第150章 もし手錠がもう一組あれば……

藤原月の長い脚が先に出てきて、静かだった夜が一瞬にして輝きを放った。

高橋真子は横に立ち、表情が緊張し始め、手はバッグをしっかりと握りしめていた。

「若様がお帰りになりました。」

「ああ！田中おじさん、車庫まで移動をお願いします。」

藤原月がそう言うと、黒い瞳で隣の女性をじっと見つめた。

「若様はお家で夜を過ごされるのですか？」

「もちろんだ！」

藤原月はそう言いながら、まだ高橋真子をじっと見つめていた。

田中おじさんは、この夫婦にはまだ騒動がありそうだと思いながらも、心の中では喜んでいた。二人のために場所を空け、車を車庫へと移動させた。

高橋真子は彼が彼女の前に立って見つめ始めてから、もう彼を見ることはなかった。田中おじさんが去るとすぐに、中へと歩き出した。

藤原月は長い脚で後ろをついて行き、両手を濃い色のコートのポケットに入れていた。

高橋真子が玄関に足を踏み入れた瞬間、突然立ち止まった。

ある人が彼女のコートの後ろで、蝶結びを軽く引っ張り、「蝶結びが解けているよ」と言った。

高橋真子は全身が凍りつき、反射的に手を後ろに伸ばした。

しかし紐に触れる前に、彼の声が聞こえた：「僕がやるよ！」

高橋真子の目が一瞬で熱くなった。

藤原月は長い指で、ゆっくりと丁寧に蝶結びを結んでいった。

高橋真子の手はゆっくりと元に戻った。

彼の動きは慣れていて、表情もいつものように人を寄せ付けないものだった。

蝶結びは相変わらず彼によって美しく結ばれ、終わると手を離し、ただ「できた！」と一言。

高橋真子は喉が動き、ありがとうと言おうとしたが、結局言葉にできず、ただ中へと歩を進めた。

彼女は自分がどちらの足を踏み出しているのかわからなくなっていた。判断力を失ってしまったようだった。

ただ後ろの人がすぐにも追いついて、背後から彼女を押し倒すような気がした。

もし手錠があったら……

うん！

そうしたら彼女は法的に処理されることになる。

ソファーでは、お爺様とお婆様がお茶を飲みながら話をしていた。二人の足音を聞いて目を上げると、お婆様はすぐに涙を含んで高橋真子を見つめ、「真子、もうおばあちゃんのことを愛してないの！」