夕食後、家族全員がソファーでフルーツを食べながらドラマを見ていた。お爺さんとお婆さんが席を立った後、大和田好美と藤原直人も帰り、ソファーには二人だけが残された。
高橋真子は両手を強く握りしめ、俯いて抑えていた。
藤原月はテレビ画面の広告を見ながら、何も言わなかった。電話がかかってくるまで。
「行かない!暇なんかない!」
向こうはかなり賑やかで、人が多そうだった。話している人の声が大きく、須藤陽太のようだった?
高橋真子は彼が今すぐ出かけてくれればいいのにと思った。夜遅くに二人きりで気まずい思いをしたくなかった。
しかし彼は行かないと言った。
しばらくして彼はまた言った:「真子が戻ってきたんだ。俺たち実家にいるよ。これでいいだろ?」
須藤陽太は彼が行かない理由を聞いたのだろうか?
高橋真子は思わず振り向いて彼を見た。藤原月は電話を切ると彼女を一瞥して尋ねた:「何かあるのか?」
彼があまりにも冷たかったせいか、高橋真子は胸が締め付けられ、すぐにまた落ち着いて小声で:「何でもない!」
彼女はただ彼がなぜ出かけないのか気になっただけだった。
あの夜のことが突然目の前に浮かび、彼女はより緊張して自分の手を握りしめた。
藤原月は彼女が自分の手を握りしめているのを見て、もう一度彼女を見た:「手はどうしたんだ?」
「え?」
高橋真子は思わず彼を見たが、まだ我に返る前に、手は既に彼に掴まれていた。
藤原月は眉を下げ、相変わらず冷たい表情だった。
しかし彼の心は何故か熱くなった。彼女は汗をかいているのか?
彼女は緊張しているのか?
彼と二人きりでいるから?
高橋真子は思わず自分の手を引き抜こうとしたが、藤原月は強く握ったまま、すぐに彼女の指を開き、二本の親指で彼女の手のひらの汗を力強く拭った。
高橋真子は汗をかいていることがばれて、何度か力いっぱい引っ張ったが逃れられず、恥ずかしさか疲れからか顔を真っ赤にして、「藤原月、離して」
藤原月はまた冷たく彼女を睨んだ。
高橋真子は思わず目を逸らしたが、お腹の中で火が燃え上がるのを感じた。
彼とこんな曖昧な親密さは好きではなかった。
藤原月はいっそのこと彼女を抱き寄せた。
「んっ!」
高橋真子は片方の頬が彼の胸に落ち、恥ずかしさと怒りで泣きそうになった。