第160章 愛憎、私はあなたが私を追い詰めることが嫌い

藤原月は四文字で彼女に分からせた。彼女を自分の思いのままにできる獲物だと。

「だから、あなたがここまでしたのは、結局そのためなの?」

高橋真子は怒りを込めて問いただした。

「そう言うなら、否定はしないさ。確かにそう思っていた」

「あなた...」

「他に質問があるなら今のうちにしておけ。後で私の気分を台無しにするな」

藤原月はそう言いながら、布団に包まれた彼女を抱き上げた。

高橋真子は反射的に片手で彼の首に腕を回したが、落ちそうな危機感から咄嗟にそうしたことに気付き、すぐに手を引っ込めて布団をしっかりと掴んだ。

藤原月は彼女をちらりと見ただけで、長い足で階段を上がっていった。

「どの部屋だ?」

二階に着いて、藤原月が尋ねた。

高橋真子は頑なに黙り込み、彼と目を合わせないように顔を背けた。

藤原月は明かりの付いている部屋を見て、自然とその方向へ歩いていった。

高橋真子は自分の心臓の鼓動が次第に激しくなるのを感じ、布団を握る力も強くなっていった。

部屋の中で、藤原月は彼女をベッドに下ろし、中を見渡すと独立したバスルームがあることに満足げに目を戻し、彼女を見上げた。「先に風呂に入るか、それとも先にするか?」

「...」

高橋真子は目を上げ、大きな瞳で彼を睨みつけた。

どうして彼はいつもこんなに真面目な顔で、こんな恥知らずな質問ができるのだろう?

「じゃあ、先に風呂だな」

藤原月はそう言って彼女が抱えている布団を取ろうとしたが、高橋真子は無意識に布団を強く抱きしめた。

それは今の彼女にとって唯一の防御だった。

藤原月は彼女を見上げ、「離せ!」と一言。

「嫌です!」

高橋真子は頑なに布団をさらに強く抱きしめた。

「10秒やる!それと、布団を抱いているからって何もできないと思うなよ」

藤原月は露骨に彼女を脅した。

高橋真子は胸が締め付けられる思いで、彼が立ち上がるのを見た。そして彼が気付かない隙に、窓の方に目をやり、そちらへ走り出した。

藤原月は反射的にそちらを見て、彼女が出窓に立った瞬間、彼の心臓が激しく締め付けられた。「何をするつもりだ?」

「出て行って。でないと飛び降ります」

高橋真子はそう言いながら窓を開けようとした。

「高橋真子、早く降りろ。ここは二階だ。飛び降りても最悪不具になるだけだ」