藤原月は立ち上がり、自らワインオープナーを手に取ると、高橋真子は無意識にワインボトルを支えた。
藤原月は彼女を横目で見ながら、ワインを開けた。
高橋真子は彼がコルクを抜いた後、手を離した。
大森千夏と木村清は、酔った状態の高橋真子が藤原月と息の合った動きをするのを見て、それぞれ思うところがあった。
藤原月はまず大森千夏のグラスに注ぎ、次に木村清、最後に自分のグラスに注いだ。使ったのは高橋真子のグラスだった。
彼は抑制の効いた静かな声で言った。「最後の一杯です。私が彼女の代わりにお二人と飲ませていただき、その後お開きにしましょう」
大森千夏はその瞬間、真の紳士とはこういうものだと悟った。
藤原月の一挙手一投足には気品が漂っていた。彼は圧倒的な存在感を放ち、この場にいる全員の中で最も裕福で権威のある人物であり、市内一の若手富豪であるだけでなく、この家の女主人の夫でもある。それでも、この状況を目の当たりにしてなお、優雅に彼らにワインを注ぐことができた。