高橋真子は「おばあちゃん」と聞いて、反射的に近づいていった。
おばあちゃんの声が耳に入ってきて、座るときに急いで顔を拭った。
藤原月は彼女の後ろに手を置いていたが、体は彼女から遠く離れていた。しかし、ビデオ通話では二人の顔がはっきりと見えていた。
おばあさんは彼の顔色が悪く、高橋真子の目が赤くなっているのを見て、思わず尋ねた。「あなた、この子が帰ってきてすぐにいじめたの?」
「違うの、おばあちゃん。さっきドアを開けたとき、目に砂が入っちゃって。おばあちゃん、明けましておめでとう!」
「あなたもおめでとう。あなたがここにいたら、もっと楽しかったのに!今年は帰って来なかったから、あの子も家にいられなくて、どうしてもあなたに会いに行きたがって。でも、彼があなたのそばにいてくれれば、私たちも安心よ。お正月なんだから、若い二人は喧嘩しないで。何かあっても数日後に話し合えばいいでしょう?」
おばあちゃんは穏やかに話し、高橋真子は笑顔で頷いた。
藤原月は画面で初めて彼女の笑顔を見て、思わず冷ややかに鼻を鳴らした。
「この生意気な子、わざわざ飛んで行ったんだから、早く私の孫嫁を喜ばせなさい。もし孫嫁をいじめに行ったんなら、さっさと帰ってきなさい」
とおばあさんは言った。
おじいさんも画面に顔を出して言った。「月、お正月なんだから、真子ちゃんと喧嘩しちゃダメだよ」
「もし喧嘩したら、真子ちゃんに新しい相手を紹介してあげるわ」
大和田好美は顔を見せなかったが、声ははっきりと聞こえた。
しばらく話をして、藤原月が彼女をいじめないと約束した後、おばあさんはビデオ通話を切った。
高橋真子もようやくほっとして、顔の笑みを一時的に収めるのを忘れていた。
藤原月は彼女を横目で見て、彼女があんなにも馬鹿みたいに笑っているのを見て、すぐに眉をひそめた。
彼と一緒にいる時は、まるで彼が何か嫌なものであるかのように元気がなく、ましてや笑顔なんて見せない。
他人に会うとこうも違って、馬鹿みたいに笑う。
高橋真子は遅れて笑顔を引っ込め、また落ち着かない様子で他の方向を見た。
彼はそこで彼女の首に巻かれた分厚いマフラーに気づき、思わず眉をひそめた。
部屋の温度は適度なのに、なぜこんな分厚いマフラーを巻いているのか?