「もう洗ったんじゃないの?」
「もう一度洗う必要があるの」
藤原月は彼女の前に歩み寄り、彼女を壁際に追い詰めた。
「冷たい!」
高橋真子は背中のタイルの冷たさに思わず目を閉じた。
藤原月は温かい手のひらを彼女の背中に添え、水で濡れた唇を見つめながら、できるだけ彼女の肌がタイルに触れないようにし、薄い唇を容赦なく重ねた。
部屋にそぐわない音楽が鳴り響き、高橋真子は胸が震え、すぐに彼の肩をつかんで注意を促した。「携帯が鳴ってるわ」
藤原月は気にせず、再び彼女にキスをし、素早く唇から横へと移動した。
高橋真子は苦しそうに彼の肩に寄りかかり、かすれた声で言った。「急用かもしれないから、電話に出てきて」
彼女はただシャワーを浴びていただけで、頭の泡も流れきっているかどうかわからなかった。
藤原月はそんなことは気にもせず、ただ素早く彼女を抱き上げた。
高橋真子は反射的に彼の首に腕を回し、泣きそうな声で卑屈に尋ねた。「藤原月、何するの?結婚式まではしないって約束したじゃない」
「男の言うことなんか信じられるのか?」
藤原月の声も少しかすれていた。
高橋真子の肌を彼が噛みつくと、瞬時に顔が青ざめた。
心の中でさらに怒りが込み上げた。男の言うことなんか信じられるのかって、どういうこと?
つまり、また彼女は間違って信じてしまったということ?
外からの邪魔な音楽が止まっては鳴り、ついに藤原月はイライラしながら動きを止め、彼女を優しく下ろすと、額を寄せて息を切らしながら言った。「待っていろ」
高橋真子:「……」
彼はバスタオルを取って体を拭きながら出て行った。
高橋真子は彼が出て行ってしばらくして我に返り、すぐにドアまで走った。
内側から鍵をかけた。
藤原月は激しいドアの音を聞いただけで、振り返った時にはドアはすでに固く閉められていた。
そして携帯電話に表示された名前も思わず眉をひそめさせた。
大和田瑞。
藤原月は電話に出た。「もしもし?」
「月!」
小林詩織は大和田瑞の携帯から彼に電話をかけ、彼の声を聞いて卑屈そうに興奮して呼びかけた。
藤原月は眉間にしわを寄せ、冷たい声で尋ねた。「何の用だ?」
「おばあさまに誕生日プレゼントを贈りたいの。月、ちょっと会えないかしら?プレゼントを渡したらすぐに帰るわ」