第194章 欲求がある

「もう洗ったんじゃないの?」

「もう一度洗う必要があるの」

藤原月は彼女の前に歩み寄り、彼女を壁際に追い詰めた。

「冷たい!」

高橋真子は背中のタイルの冷たさに思わず目を閉じた。

藤原月は温かい手のひらを彼女の背中に添え、水で濡れた唇を見つめながら、できるだけ彼女の肌がタイルに触れないようにし、薄い唇を容赦なく重ねた。

部屋にそぐわない音楽が鳴り響き、高橋真子は胸が震え、すぐに彼の肩をつかんで注意を促した。「携帯が鳴ってるわ」

藤原月は気にせず、再び彼女にキスをし、素早く唇から横へと移動した。

高橋真子は苦しそうに彼の肩に寄りかかり、かすれた声で言った。「急用かもしれないから、電話に出てきて」

彼女はただシャワーを浴びていただけで、頭の泡も流れきっているかどうかわからなかった。

藤原月はそんなことは気にもせず、ただ素早く彼女を抱き上げた。

高橋真子は反射的に彼の首に腕を回し、泣きそうな声で卑屈に尋ねた。「藤原月、何するの?結婚式まではしないって約束したじゃない」

「男の言うことなんか信じられるのか?」

藤原月の声も少しかすれていた。

高橋真子の肌を彼が噛みつくと、瞬時に顔が青ざめた。

心の中でさらに怒りが込み上げた。男の言うことなんか信じられるのかって、どういうこと?

つまり、また彼女は間違って信じてしまったということ?

外からの邪魔な音楽が止まっては鳴り、ついに藤原月はイライラしながら動きを止め、彼女を優しく下ろすと、額を寄せて息を切らしながら言った。「待っていろ」

高橋真子:「……」

彼はバスタオルを取って体を拭きながら出て行った。

高橋真子は彼が出て行ってしばらくして我に返り、すぐにドアまで走った。

内側から鍵をかけた。

藤原月は激しいドアの音を聞いただけで、振り返った時にはドアはすでに固く閉められていた。

そして携帯電話に表示された名前も思わず眉をひそめさせた。

大和田瑞。

藤原月は電話に出た。「もしもし?」

「月!」

小林詩織は大和田瑞の携帯から彼に電話をかけ、彼の声を聞いて卑屈そうに興奮して呼びかけた。

藤原月は眉間にしわを寄せ、冷たい声で尋ねた。「何の用だ?」

「おばあさまに誕生日プレゼントを贈りたいの。月、ちょっと会えないかしら?プレゼントを渡したらすぐに帰るわ」