第1章

夫から冷たいメッセージが届いた。

「今夜は残業だから、待たなくていい」

でも私は待っていた。今日は私たちの結婚3周年記念日だから。

私は念入りに身だしなみを整え、夫が一番好きな黒のガーターストッキングとセクシーなシルクのネグリジェに着替えた。

ケーキ、キャンドル、ワイン、そして夫のために長い時間かけて選んだプレゼントも用意した。

深夜になってようやく、夫は酔っ払って帰ってきた。

「どうしてこんなに酔っぱらってるの?」

苦しそうな夫の姿を見て、心配で胸が痛んだ。

「大丈夫だよ……」

そう言うと、夫はトイレに駆け込んで吐いた。あたり一面に吐きまくった。

それからソファに倒れ込み、意識を失った。

私が用意したものを見ることもなく、セクシーな格好をした私にも、まぶたを持ち上げる気力もなかった。

夫と愛し合うつもりだったのに、何も起こらなかった。

酔いつぶれた夫を見て、私はベッドまで抱えて運び、服を着替えさせ、体を拭き、トイレを掃除し、彼の服を洗った。

この数年間、こういうことをするのはもう慣れていた。

ふと、夫のズボンの中から紫色のレースのパンティーを見つけた。

私はその場で固まった。

パンティーはまだ温かく、つい最近脱いだばかりだということがわかった。そして特有の匂いがした。明らかに私のものではなく、別の女性のものだった。

もしかして、夫がこんなに遅く帰ってきたのは、残業ではなく浮気だったの?

そんなはずない、夫は私を愛している、私たちはずっと仲良く過ごしてきた……

そう、仲良く。喧嘩もせず、議論もせず、一緒に食事もせず、同じベッドで寝ることさえない、そんな「仲良く」。

そのとき初めて気づいた。彼はもう長い間、私に触れていなかった。

それでも夫が私を裏切るなんて信じられなかった。

かつて私たちは苦楽を共にし、彼と一緒になるために父親と対立することも厭わなかった。

この3年間、贅沢な生活を捨ててきたけれど、私はずっと愛に生きていると思っていた。

私と山本健一は同じ学校の同期で、偶然にも同じ会社でインターンをしていた。

でもその年、会社の採用枠が限られていたので、私は自ら辞退し、ついでに父に頼んで健一のために一言添えてもらった。

健一はスムーズにその会社に残り、3年間順風満帆で、今では副社長クラスの幹部になっている。

そして私は田舎娘として彼と結婚し、専業主婦になった。

最初はとても幸せで、楽しい日々を送っていた。健一が出世していくにつれ、彼の仕事はどんどん忙しくなり、一緒に過ごす時間はどんどん短くなった。

私はずっと彼が仕事で忙しいからだと思っていた。

でも今になって気づいた。私たちはもうかなり疎遠になっていた。

私が何か間違ったことをしたのだろうか?

私はこっそりとそのパンティーを隠し、何事もなかったふりをした。

部屋に戻り、酔いつぶれた夫を見て、私は彼に寄り添い、少しでも目を覚まさせようとした。

「ねぇ、今夜どこに行ってたの?」

「うーん……あぁ!まだ飲める……雪ちゃん……」

「雪ちゃんって誰?」私は緊張した。

夫は相変わらず質問に答えず、もごもごと呟いていたが、すぐに深い眠りに落ちた。

夫のスマホを手に取って確認してみると、ロック画面のパスワードはもう変わっていて、私の誕生日ではなくなっていた。

あの紫のパンティーは雪ちゃんという人のものなのだろうか?

ベッドサイドにある目立つ結婚写真。夫と結婚した瞬間を思い出す。私たちはとても幸せだった。でも、その笑顔は写真のように固定されることはなかった。

夫を疑いたくはないけど、このことは明らかにしなければならない。夫を尾行することに決めた。