「山田翔太、でたらめを言わないで。私をからかってるの?友達のSNSで会社が移転したって書いてあったけど、どういうこと?」
江口桜子は半信半疑の口調で言った。
数日後の義理の母の誕生日に江口桜子にサプライズを用意しようと思っていた私は、サプライズである以上、こんなに早く明かすわけにはいかないと思い、引き続き知らないふりをした。「何の移転?移転できたらいいのに。もっと大きなオフィスビルに引っ越せたらね」
「桜ちゃん、嘘じゃないんだ。会社は本当に倒産したんだ。これからはお金持ちの君に養ってもらうしかないよ。毎月何万円もお小遣いとして送ってたけど、もしかしたら、その金で借金を返さないといけないかもしれない!」
相手は暫く黙っていた。
「本気なの?」
私は突然、何か様子がおかしいことに気付いた。
江口桜子は今まで私と話すときはいつも甘い声だったのに、今日は声のトーンが低く沈んでいた。
「数日後は母の誕生日なのよ。誕生日パーティーで会社が倒産したって言うつもり?」
「山田翔太、あなた本当に馬鹿なの?この前まで会社の経営がうまくいってると思って、両親に結納の話まで持ち出したのに、こんな大事な時期に倒産するなんて!」
「しかも倒産する前になぜ私に言わなかったの?隠しきれなくなってから言うの?」
「もう最悪よ。私たちの結婚のことは親戚みんなが知ってるのに、私たち家族を笑い者にしたいの?」
私は突然呆然とし、会社移転の喜びも薄れてしまった。
笑顔を消して、無理に言った。「どうしたの?会社が倒産したのに、慰めの言葉一つもないの?これは私の会社なんだよ。子供と同じようなものなのに。倒産して私だって辛いんだ」
「そんなこと言わないで!」
江口桜子は突然声を荒げ、冷たく言った。「山田翔太、別れましょう。今日からもう私たちに何の関係もないわ!」
これで、私の顔から笑顔が完全に消えた。
「つまり?最初から私と付き合ったのは、会社があったから?お金があったから?」
「そうよ!」
ここまで来ると、江口桜子は逆に被害者ぶり始めた。
「あなたにお金がなかったら、私の大切な青春をあなたに無駄にするわけないでしょう?山田翔太、本当に失望したわ。前まであなたを才能のある人だと思ってた。何年も頑張ってやっと成功したと思ったのに、たった一、二年でこんなに会社を倒産させるなんて!」
「いいわ。会社が破産したなら、もう話すことなんてないわ。お互いSNSから削除しましょう。知り合いじゃなかったことにして、何もなかったことにしましょう。数日後の母の誕生日パーティーにも来ないで。親戚たちにあなたが貧乏人だってバレて、江口家の名誉を傷つけるのは御免だわ!」
江口桜子は非常に興奮した様子で、言い終わるや否や、私の返事を待たずに電話を切り、すぐに私のSNSアカウントを全てブロックした。まるで二度と会わないつもりのような態度だった。
五、六年付き合った彼女がこんな拝金主義者だったなんて、本当に想像もしていなかった!
胸に溜まった怒りを、もし発散しなければ、一生この思いは消えないだろう。
この数年間、彼女に費やした金銭と労力、江口家への配慮を思い出すと、私の表情は一層暗くなった。
「江口桜子……本当に失望したよ!」