第2章

私は狂ったように柳田千春の病室へ駆け込んだ。

柳田千春はベッドに横たわり、頬を紅潮させながらさくらんぼを食べていた。

私を見ると、彼女は明るく得意げな笑みを浮かべた。

「来てくれたのね。私の治療費のために家を売ってくれて、本当にありがとう」

私の頭の中で轟音が鳴り響き、全身の血が頭に上った。

あの家は母が遺してくれた遺産で、美咲を救うためにやむを得ず売ることにしたのに。

なぜこのお金が彼女のために使われなければならないの！

「私のお金を返して！」

私はほとんど叫び声で言った。

「あれは私の娘の命を救うためのお金よ！」

柳田千春は嘲笑うように口角を上げた。「お金が欲しいの？いいわよ。私に土下座して頼むなら」

お金がまだある、美咲にはまだ希望がある！

この瞬間、私の頭の中には他の考えは何もなかった。

ドサッ——

彼女がその言葉を言い終わるや否や、私は躊躇なく彼女の前に跪いた。

「お願いします」

「もう死刑判決を受けた障害児のために、随分と覚悟が決まってるのね」

彼女の嘲りなど気にしなかった。お金を取り戻せるなら、何でもする覚悟だった。

「お願い……お金を返して。美咲にはまだ助かる可能性があるの！まだ小さいのに、この世界を見る機会もないまま逝かせるなんて！」

柳田千春は突然大笑いした。「あら、残念だけど手遅れよ。私の手術はおととい終わったわ」

「なんですって？！」私は雷に打たれたように、その場に立ち尽くした。

藤原勇人は最初から美咲の手術をキャンセルするつもりだったのに、私と子供に健康を取り戻せるという希望を抱かせていた。

美咲は小さい頃からずっと病床で育ち、苦労の連続だった。

小さな手は注射の跡だらけで、傷のない場所など一つもない。

走ることも跳ぶこともできず、息を吸うのも苦しく、私は三年間まともに眠れなかった。

毎日、他の子供たちが学校に行って遊ぶのを羨ましそうに見て、自分も楽しい子供時代を過ごしたいと願っていた。

でも、普通の人になれる一番のチャンスを、藤原勇人は自ら奪い取ってしまった。

どうしてこんなに冷酷で残酷になれるの？美咲は彼の実の娘なのに！

心の痛みと怒りで私は狂いそうだった。

右手を振り上げ、「パシッ」と柳田千春の頬を平手打ちした。

「私を侮辱しても、私の夫を奪っても構わない。でも娘の命を救うお金に手を出すなんて許せない！」

柳田千春は怒りに目を見開き、私に殴り返そうとした。

しかし、私の後ろを見た途端、頬を押さえて後ろに倒れ込んだ。

「千春！」

背後から聞き覚えのある声が響いた。

振り向こうとした瞬間、後ろから強く押された。

「ドン！」私は床に倒れ、頭が鉄の枠に強く打ち付けられた。

額から血が流れ出し、目に入って世界が真っ赤に染まった。

でも藤原勇人は私を一瞥もせず、柳田千春のところへ駆け寄った。

「千春、大丈夫か？医者を！医者を！」

私が今まで一度も聞いたことのない優しさで、細心の注意を払って彼女を気遣う声だった。