第5章

夏川和子が入ってきて、私を見た瞬間に表情が凍りついた。

今日、私が会社に現れるとは思っていなかったようだ。

まあ、そうだろう。普段なら私はどこに行くにも夏川和子に報告していたのだから。

今日は夏川和子と山本海斗を完全に不意打ちしてやったのだ!

夏川和子は一瞬信じられない様子を見せた後、不満げな表情で私を問い詰めた。

【田中辰也、今日会社に来るなんて私に言わなかったじゃない。どれだけ心配したと思う。】

私は嘲笑うように笑い声を上げた。

夏川和子が何か言おうとした時、その言葉を遮った。

【もういい、まずは山本海斗の件を片付けよう。】

【最初はあなたが彼を可哀想だと言って、デザイン主任の位置に就かせた。】

【メディア芸術大学のデザイン学科を卒業したと言うから、私もあなたの顔を立てたんだ。】