「あいつが……だからって」
「藤原九郎なんか、くそくらえ!」
藤原飛雄は激しく飛び出し、ドアの外にいる藤原九郎に向かって一発パンチを繰り出した。しかし相手も負けてはおらず、素早く身をかわすと、二人は揉み合いになった。
私は他人の過去に首を突っ込むのは好まず、目の前の善悪だけを見ている。
でも、藤原九郎の言い切れなかった言葉は、私の心に柔らかな棘を刺すように、胸が詰まって息苦しくなった。
二人とも血を流し始め、諭しても聞かず、どこから手を出していいのかも分からない。
私の抑えていた怒りは、火山の噴火のように、一声の怒号とともに爆発した。
「やめろ!二人とも!」
空気が一瞬で静まり返った。藤原飛雄の拳は兄の目の上で止まり、私の怒鳴り声に驚いて相手を押しのけた。
「喧嘩するなら他所でやれ!」私は足を踏み鳴らして叫んだ。