第3章

こんなに長い間一緒にいて、藤原飛雄は私の前では、いつも優しくて素直で、思いやりのある姿だった。

とがった部分もなく、気性も荒くなかった。

でも今は、ベッドサイドにミルクを置いて、目に危険な光を宿し、私をベッドの背もたれに追い詰めるまで覆いかぶさってきた。

「お姉さん、家のことは本当に手伝わなくていいの?」

私は平静を装って、彼の首に手を回した。

あの鬼将軍のせいで、可愛い弟を失うのが怖かった。

「もし必要なら、真っ先にあなたに助けを求めるわ。いい?その時は、お姉さんを助けてくれるよね?」

彼は黙って私を見つめ、しばらく何も言わなかった。

やがて急に声を潜めて、「僕だけを好きなの?お姉さん」

私が「はい」と言おうとしたけど、声を出す前に唇を塞がれた。まるで罰を与えるかのように、荒々しく、容赦なく。

「んん……」

窒息しそうで、思わず眉をひそめて声を漏らすと、彼はやっと息を切らして止めた。

私の鼻先に軽くキスをして、私の震えを感じたのか、彼は怠そうに笑って、耳元で柔らかく潤んだ声で。

「さっきの言葉、忘れないでね、お姉さん」

「さもないと、怒っちゃうよ」

藤原飛雄の見慣れない鋭さに、私の頭が真っ白になった。「え?」

痛い……

首筋に激しくキスされ、大きな手で手首を掴まれ、ベッドに押さえつけられた。

彼自身も息が乱れるまで。

私の肌に浮かぶかすかな赤い痕を眺めながら、彼の目は熱く燃えていた。

「朝ごはん、食べなくていい?」

食べる…私を?

子犬みたいな弟が強制愛も好きだなんて誰も言ってくれなかった。私は一瞬で大海原に落ちたような気分になった。

いいわ、いいわ、息をつける余裕さえくれればいい。

ベッドの中はすでに荒波が打ち寄せ、危険極まりない。それなのに、この豪華客船は港に入る気配がない。

藤原飛雄が耳元で吐く熱い息に、私の心は宙づりになった。

「お姉さん、僕の彼女になって?」

私は焦って熱い鍋の上の蟻のようだった。「今だってそうじゃない?」

彼は予告もなく激しく腰を突き上げ、瞳の奥で暗い波が渦巻いていた。

「結婚前提の、そういう関係」