第7章

彼は気が狂ったのではないか。田中甘奈との恋愛を公表したばかりなのに、今こんなに大勢の前で私に親切にしている。

「鳴海さんは、坂本さんが私たちの撮影で疲れているのを心配して、わざわざ買ってきてくれたんでしょう。でも、先に坂本さんの好みを聞いておくべきでしたよね」田中甘奈は彼の冷たい態度にも怒らず、むしろ前に出て彼の横に立ち、フォローを入れた。

しかし河村鳴海は彼女を無視し、私にタピオカミルクティーを差し出したまま、受け取るまで諦めないという様子だった。

でも今の私には冷たい飲み物は飲めない。

前回のアイスアメリカーノで十分怖い思いをした。お腹の中でようやく形になりかけている赤ちゃんを失うのが怖くて、首を振って丁寧に断った。「ありがとうございます。申し訳ありませんが、冷たい飲み物は遠慮させていただきます」