第6章

「結構です」病院という言葉を聞いた瞬間、私は即座に断った。離婚を決意した以上、子供の存在を彼に知られるわけにはいかない。

でも彼の言葉を聞いて、思わず心が揺らいだ。彼は私のことをまだ覚えているようだった。

「生理なのか?」河村鳴海がまた尋ねた。

疑われないように、私は急いで頷いて、「うん」と返事をした。

私の言葉が終わるや否や、彼は手を私のお腹に当て、温かい大きな手でそっとマッサージを始めた。

すると、お腹の痛みが徐々に和らいでいった。

以前一緒にいた頃、彼は子犬のように素直で、よくこうしてお腹をマッサージしてくれた。でも彼の知名度が上がって忙しくなるにつれ、会う機会も減り、こんな温かい時間を過ごすことも久しくなかった。

「コンコンコン」とドアをノックする音が静寂を破った。山本奈々だった。彼女は私たちに注意を促した。「鳴海くん、今日はファン見学デーよ。あと10分で彼女たちが来るわ」