妹の白川芙美が静かに手術室に運ばれていくのを見ながら、私は微笑んだ。
実は私は何もしていない。ただ整形手術に付き添っただけで、自分を守り、そして彼女の願いを叶えさせただけだ。
目が覚めたら、きっと自分が美しくなったことに喜ぶだろう。
白川芙美が手術室に入ってしばらくすると、彼女の携帯が鳴った。母からの電話だった。
「芙美、お姉ちゃんは入ったの?」
私は眉をひそめ、すぐに理解した。まさか母が白川芙美の計画を知っていたなんて!
なぜこんなに偏愛するの!
私こそが実の娘なのに、幼い頃から彼女を贔屓して、孤児だからと同情して特別扱いしてきた。それまでは我慢してきた。
でも今回は命に関わる重大な問題なのに、母親としてどうしてこんな悪事を見過ごせるの。
しかも自分の娘に対して!
拾ってきた妹なら、恩知らずと思えばいい。血のつながりもないのだから。
でも母親として、私にこんなことができるの?
家を追い出されてやっと分かった。ただ単純に私のことが嫌いなだけ。私はずっと嫌われ者だったんだ。
「お母さん、芙美はもう手術室に入りました。」
「えっ!何て言ったの?なぜ彼女が手術室に入ったの?」
母は明らかに困惑していた。
「もともと彼女が整形したがっていたじゃない。忘れたの?当然彼女が手術室に入るでしょう?彼女じゃなくて、私が入るとでも?」
「私は...私は...」母は言葉に詰まった。「私が言いたいのは、なぜ妹を止めなかったの?整形手術は危険よ。失敗したらどうするの?成功しても後遺症があるかもしれないのに!」
ふん、やっぱり知っていたのね。整形手術のリスクを。
つまり、母も白川芙美と同じことを考えていた。私を実験台にして、白川芙美の代わりにリスクを取らせようとしていたの?
「彼女は整形に取り憑かれていて、それも一日や二日の話じゃないでしょう。あなたも知っているはず。お金だってあなたと私で集めたじゃない。どうして今になって反対するの?」
私はわざと知らないふりをして聞き返した。
母は何も言えず、どう返事していいか分からないようで、話題を変えた。「彼女はまだ若くて分からないの。お姉ちゃんとして止めるべきだったでしょう!どうしてそんな衝動的な行動を許したの?」
「私にどうやって止められるの?妹は今まで私の言うことを聞いたことがあった?」
「何を言うの!芙美はずっとあなたを本当の姉として慕ってきたじゃない!あなたって本当に薄情ね!言っておくけど、もし芙美の整形に何か問題があったら、絶対に許さないわよ!」
母は怒って言い放った。
そう、白川芙美に問題があれば私を許さない。でも前世で私に問題があった時は、知らんぷりだった。
「じゃあどうすればいいの?もう30分も経ってるけど、手術室に飛び込んで医者に止めてもらおうか?」
「何を言うの!今止めたら妹の命が危ないでしょう!わざとやってるの?あなたってこんなに意地悪な子だったの!」
母はこんな風に私を意地悪呼ばわりし始めた。こんなに焦って怒る母を見たことがなかった。
少なくとも、私のためにこんなに心配したことはなかった。
「私はお母さんの言う通りにしただけよ。今どうすればいいの?」
「そこを動かないで!私が行くから!」
一時間以上経って、母が慌てて到着したが、もう白川芙美の手術を止めることはできない状態だった。
私が一言も言う前に、母は私の頬を平手打ちした。
頬が痛くて仕方なかった。
「姉としてどういうつもりなの!妹を守るのが当たり前でしょう!」
私は頬を押さえながら反論した。「私に何の関係があるの!私は整形しないように言ったのに、彼女が無理やりやりたがったの。もう成人なんだから、自分の身は自分で守れるでしょう?」
「よくそんなことが言えるわね!妹に何かあったら、全部あなたの責任よ!」
「私の責任?なぜ私が責任を取らなきゃいけないの?笑わせないで!」
「まだ口答えするの!あなたを育てた甲斐がないわ!」
母はまた殴ろうとしたが、今度は私が防いだ。母に機会を与えなかった。
これが母への初めての反抗だった。
「私はあなたの奴隷じゃない。好きなように殴って、好きなように罵って。自分の娘の面倒は自分で見なさい!私にはそこまで関係ないわ!」
「あなた!よくもそんな口の利き方を!」
母は怒りで震えていたが、もう私には何もできない。
母がこんなに怒っているのを見て、私は妙に爽快だった。後でもっと腹を立てることになるのに。
私は白川芙美の醜い顔を見た時の母の表情が今から待ち遠しかった。